簡易防音室の「OTODASU Ⅱ DEKA(吸音材付き)」を購入したので、経緯や性能、カスタマイズした点などをまとめてみます。
購入を予定している方、性能を向上させたい方などの参考になれば。
組み立て途中のOTODASU。内部に置くものの都合上、マニュアルを無視して天井を先につけたところ。
- 金額分の価値はあるか?
- 購入の経緯
- 防音室はどれにするか?
- 到着まで
- 組み立て
- 防音性能向上のために
- 壁の吸音材が無いところをカバー
- 快適空間にするために
- 簡易防音室を買ってよかった点
- 簡易防音室の良くない点
- OTODASUのここがいまいち
- エレクターで内部を構成する場合
- まとめ
金額分の価値はあるか?
いきなり結論的な話ですが、たぶん一番気になると思うので。
用途と期待値の高さ次第ですが、このような想定なら価値はあると思います。
- 夫婦ともに同じ部屋でリモートワークをしていて、お互いの声をある程度遮断したい
- マンション・アパートの隣の部屋に聞こえなくなれば良くて、OTODASUがおいてある部屋内に音が漏れるのは問題ない
逆に以下のようなシビアな利用予定・期待値だとがっかりすると思われます・・・。
- 同居人に対しても音が聞こえないレベルで遮音したい
- 3桁万円以上する防音室と同等の性能を期待している
- 周囲からの雑音を遮断したい(外部→内部への音を消したい)
- 低音が響く楽器を演奏したい
購入の経緯
子どもがギター(アコギ)をやりたいと言い出し、色々調べると賃貸マンションではまあ難しいだろうと。
親の都合で諦めさせるのもあれなんで、サイレントギターはどう?と提案したんですが・・・
このように普通のアコースティックギターとは見た目が全く異なり、お気に召さず。
とりあえず一度買って音を聞いてみようかと買ったら予想通り爆音で、サイレンサー(弱音器)を弦に付けてもそれほど効果もなく。
防音室探しが始まりました。
防音室はどれにするか?
条件としてはこんな感じ。
- 数十万円ぐらいで収まること
- リビングに置いても許容できるデザインであること
- 平均30dBぐらい減衰してくれること
- 二人同時に中でギターが弾けること
で、探したんですが、調べた範囲では1と4を満たすのはOTODASU Ⅱ DEKAだけでした・・・。ということでわりと即決。ギターを買ってから2日後のことでした。
到着まで
納期は5週間とサイトに書いてあった通り、5週後以降の日付を指定して配達してもらえます。このへんの調整はメールなのでラクです。
時間指定はできないのですが、追跡番号を事前に教えて貰えるので当日は配達状況を確認することでもうそろそろかな?とわかると思います。
大物家具や家電の配達だと朝9時頃に電話来たりしますが、そういうのはなかったです。
1階で渡されておしまいだと思ってましたが、エレベーターに入ったおかげ?なのか自分のフロアまで運んでもらえました。
組み立て
組み立ては公式に動画があるのでそちらを参考にしていただければ。
実際に組み立てて思ったことは
- でかい
- パネルの切断面が鋭いので軍手があったほうがよい
- 二人いないと組み立てられないと思う
- 吸音材は全面粘着シートとマジックテープ2種類が装着済みだが、マジックテープだけでも落ちない
- とにかくでかい
吸音材の裏面にはマジックテープ(黄色)と、全面両面テープ(茶色が剥離紙)がついてます。
防音性能向上のために
デフォルトの状態でもそれなりの効果がありますが、どうせならもっと性能を上げたいところです。
ちなみに最大の弱点は見た目通り「天井」です。
吸音材もないし換気ファンの部分は穴空いてるし、外に出て音漏れを確認すると完全に上から聞こえてきます。
「DEKA」ではない普通サイズのOTODASUユーザーの中には、天井一面に遮音シートを被せている方がいた気がしますが、「DEKA」は大きい分強度が低いので同じ手法は厳しいと思い見送り。
防音カーテンの設置
天井に続いて弱いのはドアがある面ですね。
ドア部分には吸音材がなく、隙間もあります。ドア自体に吸音スポンジを貼っている方を結構見ますが見た目がちょっとあれなので・・・結論としては防音カーテンを設置しました。
購入したのは「ピアリビング コーズ 防音カーテン」という製品です。
吸音素材 + (空気層) + 遮音素材 + (空気層)+ 遮音素材 という5層構造で音を遮るようです。空気層もカウントしてるのは「んん??」ってなりましたけど。
問題はこれをどう設置するか?ですが、エレクターのハンガーレールをカーテンレール代わりに使っています。
エレクターベーシックシリーズ製品の最長サイズは150cmで、OTODASU Ⅱ DEKAの内寸は160cmです(吸音材を貼ると155cm)。ほぼ同じサイズなので、ポールを4本使ってハンガーレールを防音室内に巡らせています。
ハンガーレールの耐荷重は20kgなので、重たい防音カーテンも問題なく吊り下げられます。
金属製のカーテンフックを直接引っ掛けてるのでスムーズな開閉とはいきませんが、おいおい改善していければ。
ちなみに効果はかなりあります。カーテンを閉めるだけでドアを閉めるのと同じぐらいの効果があります(体感ですぐわかるので、かなり下がってるはず)。
買ったカーテンのサイズは、リンクの通り「幅110cm、高さ178cm」のものです。内寸は155cmですが、ドアの面は左右に吸音材があるので「ドア部分を覆えればOK」としています。
カーテンレール代わりのハンガーレールの位置は2.5cm刻みで自由なので、床ギリギリに調整できました。
床ギリギリのカーテン。
カーテンフックは金属製のものに変えました。プラスチックのアジャスタブルなやつは、引っ掛けるところが狭すぎてハンガーレールに掛けられませんでした。
防音マットの設置
床方向の音はどの程度漏れているかわかりませんが、「音源が床に当たり跳ね返って天井から抜けている」ような気がするので、間接的に天井からの音漏れが軽減できそうだなと対策してみました。
買ったのは「MUTE 防音専科」という商品です。mybestでの評価で圧倒的1位だったということで選びました。
1枚が50cm四方で、OTODASU Ⅱ DEKA(吸音材あり)の内寸は155cmなので・・・
9枚で3x3に並べ、1枚を5cm幅にカットして隙間に埋めました。吸音材なしの場合は11枚必要になるかと思います。
かなりの厚みがありたしかに高性能っぽさがあります。感触もいいですね。ホテルの床にも使われているみたいです。
防音室内の内寸(高さ)ギリギリの構造物を置く場合、タイルマットの厚みを考慮する必要がありますが、重量がかかると厚みは半分程度になります。
ちょっとつぎはぎのマット。自分でカットするの難しい。
換気ファンからの音漏れ対策
換気ファンの部分には蓋ができるようになっていますが、閉めると室温が上昇してしまいます。換気能力を確保した上で対策する必要があります。
結構悩んだ結果、
- 遮音シート
- 吸音スポンジ
- ダイソーのアクリル収納箱
この3つを使い、換気ファンを上から覆うものを自作しました。
作るのが結構面倒だったんですが、効果はいまいちかも・・・?
単体で試した限りではかなり音を吸収してくれるんですけど、実際に設置するとあまり感じられず。天井全体から音が漏れちゃってるんでしょうね。
遮音シートは「サンダム CZ-12」というものを選択。加工のしやすさ的にはこれしかないような気がしました。
制作風景。遮音シートを箱の内寸に合わせてカットしまくります。
完成品がこちら・・ですが、通気口(アクリルケースの取っ手部分)のスポンジが未カットの写真でした。
アクリルや遮音シートでわりと重くなってしまい、天井は耐えられるかなと心配でしたが、なんとか大丈夫そう。
壁の吸音材が無いところをカバー
セットで買った吸音材は、なぜか上部10cmほどがノーガード状態です。
天井は壁の継ぎ目は一部穴が開いているので、音漏れしやすい場所です。
ここは先人たちがみなやっているように、吸音スポンジをはめ込みました。
スポンジの摩擦力により両面テープなど無くてもきれいにはまってくれます。
使っている吸音スポンジはRoute1というブランド?のものです。プロが監修してて商品説明の日本語が不自然ではないというだけで選びました。
これ単体の性能はまったく測れないですが、見た目だけでいうと端っこの処理が適当なのが残念ポイント。ロールケーキの端っこみたいな?
隙間にいい感じにはまってくれました。両面テープなどは使っていません。
快適空間にするために
照明の設置
OTODASUの天井は半透明のプラスチックなので光を透過します。
OTODASUの真上にシーリングライトがある場合は、照明は用意しなくても大丈夫だと思います。
我が家では部屋のすみっこに置いたので、あまり光が入らずLEDライトを設置しました。
買ったのはルミナスラック用のLEDライトです。
幅が120cmとかなり長く、明るさは1000ルーメンほど。
これを2本屋上に「乗っけて」います。光を透過する天井を活かして。
わりと発熱するので室内に置きたくないのもあります。
2本設置して「生活するのに問題ないレベルの明るさ」って感じですね。勉強するにはちょっと足りない程度。
天井は光を透過するとはいえ半透明の素材なので、正直なところだいぶルーメンが削られてる感はあります・・・
この商品のいいところは、1つの電源からLEDライトを次々に繋げられる点です。最大10本ぐらいまでつながるみたいです。
モニターアームの設置
リモートワークで拡張ディスプレイとして使ったり、ゲームやったりYoutube見たりしたいのでモニターを設置しました。
しかし限られた空間なので、スッキリと設置したい・・・ということでモニターアームをエレクターのポールに設置しました。
やり方はざっくりこんな感じ。
- モニターアームの台座から垂直の棒を外す
- 設置したい場所にテーパードスリーブをつける
- 外した垂直の棒をポールに通す
- 上からテーパードスリーブを挿す
- モニターアームを通して設置する
コラボ商品なんじゃないかってぐらいピッタリはまったんですが、これがもう取れなくなっちゃいました。原因は4の「上からもスリーブをはめた」ことです。
最悪プラスチックのスリーブを割れば取れそうですが・・・かなりめんどくさそうなんで、同じように設置する方はお気をつけください。
使っているモニターアームはHPのものですが、エルゴトロンのOEM品なのでおそらく↓の商品でも同じように設置できると思います。
照明や換気ファンを無線スイッチに
付属の換気ファンや自分で設置した照明にはそれぞれスイッチがついてますが、出入りのたびに3つのスイッチを操作するのはダルすぎます。
最初は人感センサーと連携しようかなと思いましたが、動かないでいると勝手に消えてしまうトイレのような環境が再現されてしまうので見送り。
スイッチボットの電源プラグとリモートボタンで手動でON/OFFできるようにしました。
この組み合わせは超おすすめです。気に入って家の他の場所にも導入してます。
簡易防音室を買ってよかった点
いつでも自由に楽器の練習ができる
音楽教室に通ったときだけ弾けるとか、サイレンサー付きで不満を感じながら弾くということから開放されるのはやっぱり大きいですね。ちょっとやろうかな、と思ったら家でできるので。トレーニーがホームジム作る感覚ですね。
リモートワークにも役立つ
「画面ありのZoom」でも背景に映り込むものが無いので安心です。
防音室内・外で音が遮られるので、声もあまり気にならなくなります。
子どもの受験勉強にも
騒音や誘惑から遮断されるので、勉強部屋にも役立つかなと思っています。
空調コストが安く済む
1.5㎡の空間を管理すればいいだけなので、光熱費の削減に役立ちそうです。
暖房として今使っているのは沸騰させるタイプの加湿器です。本体の熱で結構あったまるし、湿度も適度に加えられます。部屋が狭いので風が出るタイプの暖房はあまり向いていないですね。
冷房は悩ましいですが、小型のエアコンみたいなやつを見つけたので来夏に設置してみようかと・・・↓こんなやつ。
排熱ダクトを天井のファンにつなげようかと妄想しています。
同じ部屋内で二人が映像・音楽を視聴できる
リビングが広めなんですが、一人は音楽を聴きたい、一人はテレビを見たい・・だと音が混じるのでどちらかが我慢することが結構ありました。
OTODASU設置後は気にしなくてよくなりました。
簡易防音室の良くない点
とにかくでかい
今回導入したOTODASU Ⅱ DEKAのサイズは高さ190cm、幅170cm、奥行き170cmです。
巨大な箱が部屋に出現します。とにかくでかいです。
追加コストが意外とかかる
箱を買っておしまい!ではなく、内部に設置する照明や棚、デスク、モニター、防音マット、カーテン・・・などなどさまざまな出費があります。
計算してませんが、なんだかんだ10万円超えてるはずです。
しかもこれで終わりでなく、夏を迎えたときに暑さ対策でなにかを買いそうな予感もしています・・・。
ほんとに「一部屋増やす」感じですね。
部屋への影響色々
とにかく大きく、室内に備品を設置し終わるとずらして動かすことも困難です。設置する場所によっては・・・
- 窓開かなくなる
- 採光できなくなる
- エアコンの清掃ができなくなる
- 壁のコンセント使えなくなる
- シーリングライトが防音室で隠れて部屋が暗くなる
このような影響が考えられます。設置前に床のワックス掛けとかもやっといたほうがいいかもしれないですね。
OTODASUのここがいまいち
税別なの!?送料が万単位!?
「30万弱ね・・オッケ買おう」と思って支払いへ進んだら消費税と送料が加算されて、35万ぐらいになりました。
勝手に税込みだと思いこんでただけなんですけど、ちょっとショック。元が高いからね。うん。
送料も高いですね。長辺が200cmほどのダンボールなのでしょうがないんでしょうけど・・・送料は地域によって変わります。我が家より高い地域もあってまだマシなほうでした。
吸音材の汚れ
吸音材は裸でダンボールに詰められていました。
そのせいで内側のフタの線がくっきりとついちゃってます。
段ボールは5箱ぐらいに別れていますが、1箱を除いてすべてこうなっていました。
壁に貼ったときに見える面なのでちょっと気になる。
緩衝材ほどじゃなくても紙切れ1枚入れておけば防げるので改善してほしいですね。
吸音材のサイズが違う
サイトに「吸音材の貼り方」があるんですが、そこに掲載されている吸音材は壁1枚に対して4枚貼り付けるサイズでした(たぶん90cm × 80cmぐらい)。
でも実際に届いたのは壁1枚に対して16枚貼り付ける(45cm × 40cmほど)タイプでした。
枚数が少ないほうが継ぎ目が少なくきれいなので、ここは大きいのがよかったなぁと。
吸音材からのホコリ
吸音材は
- 不織布
- 吸音材
- 遮音シート
で構成されていて、表面は問題ないんですが断面が吸音材がむき出しです。
この素材はポリエステル綿みたいに見えますが、触っただけでホコリがめっちゃ舞います。
側面も不織布で加工してあったらなぁと。
そんなわけで防音室内にも空気清浄機が欲しくなってます。またコストが・・・。
換気ファンがうるさい
天井には4台のファンがついていますが、これが結構うるさいです。
中で楽器を弾くならあんまり問題ないですが、配信したり歌を録音したいという場合は止めないとノイズが乗りまくると思います。
ファンはよく売ってる12cmのタイプなので、静音タイプに置き換えることを検討してます。
OTODASUに付属しているものもアマゾンで販売されていて、調べたところ1900RPMでした。
回転数が低いタイプか、回転数調整可能なファンにしたいですね。
なお、防音室「外」でもうるさく感じます。この点は手作りカバーでちょっと静音化できました。
小さな子供がいる場合
壁やドア素材のパネルの断面のうち、人がよく触れそうなところはきれいに加工してありますが、そうではない場所はプラ段ボール素材の断面がむき出しです。
加工がしてある場所でも結構エッジが鋭いので、ハイハイするような子どもがいる家庭にはちょっと置きづらいかなと思いました。
エレクターで内部を構成する場合
防音室内にエレクターで色々設置したい方に向けて、今回思ったことをメモしておきます。
- ポールは190cmがおけます。
アジャストボルトがついていますが、これを外すことで高さ内寸189cmのOTODASUにも入ります。(防音マットの上に置けているので、ボルトを外すと実質188cmぐらい?) - 室内でギターを二人同時に弾くなら、デスクとして使うワイヤーシェルフの奥行きは45cmが限界
- 一度組むとポールが天井ギリギリなので、天井を外さない限り構成変更ができない
- シェルフの裏面に遮音シートと吸音材を貼ることで、天井方向への音を多少遮断できる(可能性があるというだけでまだやってないですけども)
- 防音マットの上に置いていますが、デスクとして使ってもぐらつきは感じられないです。
- 150cm幅のパーツは、バリエーションが非常に少ないです。
エレクター経験者なら「あれとこれがあるから、こんな構成にして・・」と妄想しがちですが、150cm幅のラインナップを最初に確認することを強くおすすめします!
まとめ
結構お金かかりましたが、まあ満足してます。
注文住宅で防音室を作れず、ヤマハとかの防音室も重量的に置けない賃貸庶民にはそもそも選択肢が無いのかもしれないですね。それを見透かされた価格設定な気がしてきました。
ちなみに色々対策をしても「低音」に対する性能はあまり上がってない感じです。色々な素材を見ても低音に対する効果は低めなので、難しいんでしょうねー。